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私の本棚とブックマーク


■私の本棚
○「流沙の塔」(上・下) 船戸与一著 2000.11.1発行 朝日文庫
○越境する新疆・ウイグル 新免康編 1999.2.20 勉誠出版発行
○「宮沢賢治と西域幻想」 金子民雄著 1994.7.10発行 中公文庫
○「アジアの奥地へ [上] 西域を行く」 ユーリ・レーリヒ著 1985.9.5 連合出版発行

■マイ・ブックマーク
○新疆研究室(菅原純ホームページ)   ⇒紹介
○TAEKLIMAKAN   ⇒紹介


「流沙の塔」

「流沙の塔」(上・下) 船戸与一著 2000.11.1発行 朝日文庫

「...沙河に多くの悪鬼、熱風あり。遭えば即ち皆死して、一として全き者なし。上に飛鳥なく、下に走獣なし。遍望曲目、渡る処を求めんと欲すれば、即ち擬する所を知らず。唯死人の枯骨を以って、標識と為すのみ。」

という東晋時代の求法僧・法顕の言葉が巻頭に置かれているこの長編推理ミステリー小説は、1994年9月から95年12月まで「週間朝日」に連載され、その後単行本となり、そして2000年11月に文庫本が出版されました。

横浜で若く美しいロシア人女性が殺された。死体には真紅の薔薇の花、左胸には狼の紋様が刻まれたナイフ。その手口は一月前、中国広東省・梅県で起こった事件に驚くほど酷似していた。二つの事件の背後には、中国の裏社会で対立している秘密結社・会道門同士の抗争、ウイグル民族独立運動をめぐる内紛、公安当局の暗躍とが複雑に絡み合っていた。それぞれの思惑に翻弄される男たちが、タクラマカン沙漠の沙塵の彼方に見たものは ― 中国の闇の世界を抉り出す長編大作。

これ以上物語の内容を明かしては読む楽しみが減ってしまいますので、ここでは物語の主な舞台となる地名を紹介するだけに止めます。

・横浜
・成都、甘孜チベット族自治州康定
・北京
・梅県(正式には広東省梅州市)
・トルファン
・ウルムチ
・イーニン(伊犁カザフ自治州州都)
・コルラ(巴音郭楞モンゴル自治州州都)、ボステン湖
・西州回鶻国遺跡、タクラマカン砂漠タリム盆地
・そして間接的に、カシュガル

ウイグル族の人々にとっては、切なくそして苦々しいストーリ展開になっています。

〜〜芥子に頼るは流沙に塔を築くが如し〜〜

(2001.6.9)

「越境する新疆・ウイグル」

「アジア遊学No.1 越境する新疆・ウイグル」 新免康編 1999.2.20 勉誠出版発行

本書には新疆に関する12の論文と2つの随筆が載っていて、現在のウイグルの経済、文化、教育、言語などについて幅広く論じられています。ただし政治の現状に関する分析が無いのが残念に思われます。

その内容は:−
○越境する新疆・ウイグル ■新免康
○新疆がどうして中国になったのか
   ―近現代の経済史から― ■堀直
○ウイグル人の近代
   ―ジャディード運動の高揚と挫折― ■大石真一郎
○ウイグル語の危機
   ―アイデンティティの政治学― ■藤山正二郎
○バザール・混沌の奥にある社会システムを求めて ■真田安
○新疆における国境貿易」■章瑩
○創出されるウイグル民族文化 ■菅原純
○ウイグル音楽の歴史書 『楽師伝』 と
   民族的英雄アマンニサハンの誕生 ■鈴木健太郎
○聖なる空間を訪ねて ■新免康
○ウイグル人のイスラム信仰 ■王建新
○一日走破タクラマカン砂漠 ■池上正治
○新疆における伝統的生薬文化」■マリア・サキム
○ウルムチ暮らし ■石村実
○模索するウイグル人 ■リズワン・アブリミティ

巻頭言的な最初の新免先生の論文の中で、次のように述べられています。
...新疆は、きわめてユニークな相貌を具えた地域である。一言で言えば、地理的には中央アジアの東半分の空間を占め、言語・文化的には中央アジアのトゥルク系イスラム文化に属する諸民族が多数居住する一方、政治的には中国の一部としてその領域に組み入れられている、...

...しかし、「シルクロード」と「中国における民族問題の焦点地区」というこれら二つのイメージの間には著しい落差が見られる。当地域の社会・文化・歴史などに関する系統的な情報・知識を提供することによって、その空隙を埋めようとするような努力がどこかでなされているのか...

...これらの論文には、現在の日本でとくに発展傾向にある分野の新疆地域に関する人文系の研究の特質が、如実に表れている。...
...新疆の現状に対する理解の深化に有効な知識と観点を提供するような性格を持っている、...

...これらの研究は...当該地域との実際的な接触を通して進めらたものである...論文の著者となった日本人研究者に関して言えば、その全員が新疆「現地」に留学して長期間滞在したり、学術調査に従事したり...
...他方、著者名を一瞥すればわかるように、日本人のみならず、中国人研究者からも日本語で論文が寄せられた。これらの著者の中で、マリア・サキムとリズワン・アブリミティは日本に留学して研究した...一方、王建新は...現在日本で学位論文を準備中である。...

(2001.7.7)

「宮沢賢治と西域幻想」

「宮沢賢治と西域幻想」 金子民雄著 1994.7.10発行 中公文庫

私の故郷・花巻が生んだ偉人である宮沢賢治と西域の関わりを、著者の自由闊達な発想をもとに著した随想集です。今では在庫切れで入手困難かもしれません。

法華経を信仰した宮沢賢治にとって、数多くの仏典が発見された西域は憧憬の地だった。賢治の詩や童話に登場する西域の意味を丹念に読み解き、著者の個人的体験を含めた幅広く自由な解釈を重ね合わせることによって、賢治作品に新しい魅力を見出した随想集。

(2001.6.9)

「アジアの奥地へ [上] 西域を行く」

「アジアの奥地へ [上] 西域を行く」 ユーリ・レーリヒ著 1985.9.5 連合出版発行  

本書は1925年3月から28年5月まで行われた新疆、モンゴル、チベット調査旅行の記録の前半に当ります。著者はロシア生まれの東洋学者ユーリ・レーリヒで、調査団の団長は彼の父ニコライ・レーリヒ、母エレナも同行しました。時代はヘディンやスタインのそれと重なります。

目次を紹介しましょう。

第1章 カシミールからラダクへ
第2章 大カラコルム・ルート
第3章 ホータン
第4章 ホータンからカシュガルへ
第5章 大北道をウルムチへ
第6章 ウルムチとジュンガリア
第7章 モンゴル
第8章 探検隊の再編成
第9章 ウルガからユムベイスへ
第10章 南西ゴビを越えて
第11章 軍僧、ジャ・ラマ

私が特に興味深く読んだのは、スリナガル、レーからホータンに至るカラコルム越えの行程と、ホータン、カシュガルを経てウルムチに達する行程です。
前者ではカラコルムの大自然との悪戦苦闘が、後者では辛亥革命からまだ日が浅く混沌とした新疆の政治情勢の中を行くキャラバンの様子が描かれています。彼らの旅は自分の足と馬とラクダやヤクで行われました。(数年後のヘディンの調査団にはトラック4台が使われています。)

下巻のサブタイトルは「チベットを行く」です。
(本書の原著は1931年の発行)

(2001.6.9)





新疆研究室(菅原純ホームページ)

http://www3.aa.tufs.ac.jp/~sugawara/jsindex.htm

中央アジア史、特に中国領の新疆 (東トルキスタンとジュンガリア) の近代史を専門とする、新進気鋭の菅原先生のHPです。先生はコンピュータやインターネットにも大変お詳しいようです。
HPの内容は...

・ごあいさつ
・プロフィール
・研究室日記 兼 What's New?
・既発表論文等
・新疆関係リンク (新疆研究サイト提供)
・新疆研究サイト (中大、新免康研究室)
・新疆地域情報 (科研総括班提供)
・現代ウイグル語を勉強しましょう!
・フィールド・ノート (海外調査)
・研究室 (現在進行中の研究)
・新疆研究リソース(史料・文献情報など)
・談話室(BBS

と多岐にわたっています。本来は研究者や大学生のためのHPと思いますが、新疆に関心を持っている素人にも楽しめます。ウイグル語の勉強もでき、ネイティブ・スピーカの発音を聞くこともできます。

私が興味を持って度々訪れるのは「研究室日記 兼 What's New?」(http://homepage2.nifty.com/jsugawara/nikki/nikki.htm)です。新進の研究者の日常生活が克明に記されています。研究者仲間との議論、研究費を得るための苦労、コンピュータやインターネットにまつわるあれこれ、学部学生に対するウイグル語の授業のこと、などなど...

研究のお邪魔にならないように、先生にメールを送ることなどは慎重にお願いします。

(2001.6.9)

TAEKLIMAKAN

http://www.makanim.com/

どこの誰が作っているHPか分かりませんが、かなり凝った作りになっています。ウイグル語、中国語、英語と3つの入口がありますが、英語はまだ中身がありません。(大分前から同じ状態です。)
最近のPCは中国語(簡体字)のフォントが標準で備わっているようなので、中国語のページをぶらついてみては如何?詳しい内容は読み取れなくても、音楽を楽しむことができます。例えば「民族音楽」(http://www.makanim.com/chinese/music/)のページからは「12のムカム」のような古典から現代の曲まで幅広く聞くことができます。但しこちらもメニューがあるのに中身のないページが結構多いので、あせらずのんびり探してみて下さい。

(2001.6.9)

(2001.6.9掲/7.7改)